編:瀬川昌昭
第三回
「続・人口爆発」
『人類生存の大法則』(1995年徳間書房)の中で糸川英夫氏は人口問題が人類生存の危機と警告した。
氏が提起した問題点は二つ、
第一に、地球は100億人の人類の生存に耐えられるか?つまり、100億人の人口が地球と言う惑星に対して過剰なのかどうか
第二に、殆どゼロに近い人口から、極めて短期的に無限大に近い数値への「言語に絶する異常な急変化」に人類のシステムが耐えられるのか? すなわち、人口増加のスピードが問題なのかである。(同書205ページ)
の2点である。
糸川氏はこれを現在(1985年)の科学では解を求めることが出来ない「非線形問題」とし、将来のコンピュータの進歩に望みを託していた。
その上で、「地球上の日本という一点」にいる我々はどう対処したらいいかを考えている。
国連の世界人口白書によると、人口問題の視点から世界は大きく三つのグループに分けられると氏はいう。
「A群は、日米欧など先進諸国―人口が一定であるか、あるいは減少さえしている国々B群は、目下人口増加率は高いが、同時に高い経済成長を続けている国々、これは東南アジア諸国が例となる。B群諸国に対して経済援助を有効に行うことによって各国の人口増加が安定した比率に収まるよう貢献することができるだろう。
C群は、主としてアフリカ諸国である。貧困と文化が複合化して、近い将来に経済成長は望めない。一方人道的な観点から、国連やNGOの活動が行われ、かつては高い乳幼児死亡率によって調整されていた総人口が爆発的に増えつづけると予測されている」
人類生存の鍵は、人口問題で見る限りアフリカが握っているという結論になる。
とすれば、日本から見ればアフリカは遠い国々であるが、50年、100年の長期的視点で見れば、今、日本はアフリカ諸国に対して何ができるかを考えることが重要だ。以上、糸川氏が提起した要点を述べた。
2001年9月11日、ニューヨークの同時多発テロに続きアフガン戦争が世界中の注目を集めた。この21世紀初頭の出来事を目の当りにするにつけても、また日本の不況が不況化している現状を見るにつけても、糸川英夫著「人類生存の大法則」の第4章歴史は終わらない〜人類滅亡の危機への挑戦〜同書178ページ〜223ページは出来るだけ多くの方々に読み返していただきたい。
ここでは、その中の221ページ〜223ページをご紹介する
● イスラム問題とアフリカ問題
以上のような世界の流れが順調に進み、B群諸国がやがてすべてA群になり、C群諸国がやがてB群を経てA群になっていければ、A群諸国の新しいリーダーシップのありかたという大問題を除けば世界には大きな問題はないことになる。しかし、とはいえ世界の今後はそれほど順調には行かないだろうと、筆者はみている。大問題が三つ存在するからである
第一はすでに述べてきた先進諸国の不況と雇用不安などの共存するときの国際統率システムの不在、筆者のいう複合文明不況の問題である。EUやAPECやNAFTAがそれぞれへの最終回答であると私は思っていない。
第二はイスラム問題である。ご承知のように近代産業は、キリスト教を文化の基礎とする国に生まれた。その近代産業の文化を、仏教や儒教を文化的基礎とする国が受け入れてA群化することは可能であった。日本、韓国、台湾、中国などの例がそれを示している。
しかし、果たしてイスラム教国ではどうか。現在のイスラム諸国の多くは、B群もしくはC群に属している。これらのイスラム諸国が、B群からA群へと順調に成長を続けることが可能なのかどうかは、まだ証明されていない。中東問題、イスラム原理主義、あるいはイスラエルVSパレスチナ問題が重要な理由はそこにある。
キリスト教を生んだユダヤ教を文化の基礎としているイスラエルは、問題を抱えていても完全にA群諸国の一つである。そのA群のイスラエルと共栄して、C群のパレスチナがやがてB群になりA群への道を歩むことが出来るかどうか。イスラム教が6億人以上の大人口を抱える大宗教であるがゆえに、この問題はさけてとおれないほど人類の未来にとって大きい。
第三はアフリカ問題である。人工問題から見ると、21世紀の人口爆発はC群諸国が大半を占めるアフリカで起こる。生活水準はC群でも、医薬品だけは援助をとおしてアフリカ諸国にも大量に入っている。そのおかげで、かつては人工調節弁となっていた乳児死亡率が大きく低下している。これが現在のアフリカの人口爆発の最大の理由である。可哀相にこの傾向がそれからますます強まることで、21世紀の人工大爆発が予測されるのである。
人類の発祥地であるアフリカは、殆どの国がC群に属している。しかし、南アフリカのように少なくとも国民の一部(白人)は、A群諸国の水準に達している国もある。またエジプト、アルジェリアのように、C群を脱して努力してB群に位置しようとしている国もある。アフリカはひと言で貧しいとまとめるのが不可能なコンプレキシティ(複雑さ)そのものの地域、人類第三の悩みの地域(人類第二の誕生期でもある)なのである。
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